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印刷会社各部署の仕事に必須な道具をご紹介する七つ道具シリーズ、第2回になります。
今回取り上げていくのは制作部。印刷機やインキ、紙などさまざまな種類の資材がフロアを形作っている印刷部とは違い、制作部のフロアはパソコンがいっぱい。こちらの部署ではどんなものが七つ道具になっているのか? 今回も突撃してきました!

印刷部とはうってかわって……

弊社の制作部は主に印刷物のデザインや誌面のレイアウト作業(=組版)を行う部署で、製造部門のなかでも最上流に位置しています。ほかにも取材や撮影の手配を請け負っていたり、近年では印刷物を離れてとある分野にも注力していたりするのだとか……。

また、営業と一緒にお客様との打ち合わせに出席したり、コンペでプレゼンを披露したりなど、比較的お客様との接触機会が多い部署でもあります。道具も幅広いものが登場しそうですね。それでは今回もインタビュー形式でお届けします!

制作部に突撃インタビュー‼

インタビュアー(以下「イ」):本日は制作部の七つ道具をご紹介いただきます。どうぞよろしくお願いします!

制作部員D・E・F(以下「D」「E」「F」):よろしくお願いします!

D:はじめにそれぞれの仕事内容を話したほうがいいのかな。わたしはDTPオペレーターといって、ソフトを使って印刷物の誌面をレイアウトする……いわゆる組版作業をやっています。

E:俺はデザイナーだね。名前の通り印刷物のデザインを考えて、実際につくっちゃいます。

F:僕はディレクター。進行管理役として営業やお客様との連絡窓口になって、オペレーターやデザイナーの方に作業の指示をします。ほかにも予算やスケジュールの管理、見積もり作成なんかも業務範囲です。

イ:なるほど……それでは一つ目の道具からお願いします!

D:はい。制作部の七つ道具、一つ目は……

D:Adobe社のソフト・ツール全般です。いろいろあるのでまとめて一つ、ということで。

F:制作部に所属している人はみな一人一つずつAdobeのアカウントを持っていて、各ソフトがパソコンにインストールされています。

E:Illustrator、Photoshopなんかは印刷業界以外でも使っている人は結構いるのかな。ただウチみたいにページものの制作をしているところはInDesignがメインになるよね。

D:ページものの冊子というのはたいがい冊子全体に共通するルールがあります。たとえば版面やノンブル(ページ番号)が入る位置なんかだね。InDesignにはそれを冊子全体で設定する機能を持っています。

イ:はい、入社したときに習いました。たしかマスターページといったような。

D:そうだね。ただ最近になってAdobeはマスターページを親ページと呼ぶようになったんだ。

E・F・イ:えっ!?

D:うん。もともと「マスター(master)」とマスターに従属する各ページのことを「スレーブ(slave)」と呼んでいたのだけれど、これが親ページ/子ページに改められた。

イ:slaveって「奴隷」のことですよね……たしかにちょっとセンシティブな表現かもしれません。

E:全然知らなかったな~。みんなマスターページって呼んでるし。

D:これに限らずAdobeソフトの機能の名前なんかは結構変遷があったりするね。ただこういったセンシティブな事情だけではなくて、「各ソフトでバラバラになっている名前を統一しよう」というケースも多いですよ。

二つ目は……?

イ:それでは二つ目の道具もお願いします。

E:うん、二つ目はカラーチャートだね。

E:こんな感じで色見本が並んでる。たとえばこのページはCとYの掛け合わせが載ってるね。CMYKの各色の割合が少しずつ変わっていっているから、このなかからデザインに使う色の配合を考えるんだよ。

F:ちなみにこれはコート紙用のカラーチャートです。色味は紙の種類によっても変わりますからね。

E:それと、カラーチャートと一緒に使うものがあって……これ!

イ:なるほど、周りの色が隠れてお目当ての色だけがフラットに見えます!

E:あとは俺の前職だとCMYKだけじゃなくて蛍光ピンクを配合したカラーチャートなんてのもあったな。蛍光ピンクを入れるとまた色の表現が変わってくる。肌色がきれいに出せたりとかね。

三つ目は……?

イ:ありがとうございます。三つ目の道具もお願いします。

F:三つ目は色鉛筆ですね。

F:これは校正のチェックに使う道具です。校正専用に作られた鉛筆とかではなくて、市販の普通の色鉛筆を使っています。

イ:なるほど……2色あるということは、何か使い分けがあるのでしょうか?

D:そうだね。うち独自のルールになるけど、たとえば初校戻りでこんなふうに赤字が入ったとしましょう……

D:まずオペレーターは赤字をプリントする。プリントした赤字とソフトの画面を見比べながらソフト上で修正を反映していくんだ。赤字一か所ずつを修正して、修正したら都度プリントのほうに水色の鉛筆でチェックを入れていく。

D:赤字をひととおり修正したら、校正者に回す前にオペレーター自身が「赤字通り修正が行われているか」をチェックする。こちらも一か所ずつ確認していって、問題がなければプリントのほうに黄色の鉛筆でチェックを入れる。こうすると、赤字一か所に対して水色・黄色の2色のチェックが入るわけだね。

F:結局は人が手作業でやっていることなので、ミスが発生する可能性はゼロではありません。だからこそチェックが必要になるんですよ。

D:ちょっと怖いのが「水色のチェックが入っているのに、画面を見ると修正がされていない」というケースかな。これは「赤字が入った箇所とは別の箇所を誤って修正してしまった」可能性がある。

F:医学書や法律関係の専門書なんかは同じ用語が何回も繰り返し登場したりしますから、そういったミスが起こりやすいかもしれません。あとは外国語の文章なんかも要注意ですね……。

四つ目は……?

イ:ありがとうございます。四つ目の道具にいきましょう!

F:はい。バーコードリーダーです。

イ:おお、コンビニのレジにあるやつですね。制作部でも使うんですか?

F:制作部では書籍の組版も行っています。書籍は裏表紙にだいたいバーコードが入っていますよね。表紙のデータをうちで作るときはバーコードもあわせて作ることになります。そこで、作ったバーコードが正しくできているかチェックするためにこの道具を使っていますね。

E:試しにやってみようか。こうやってUSBの部分をパソコンにつないで、バーコードを読み取るの。メモ帳なんかを起動させておいて読み取ると……

イ:メモ帳に数字が入力されました!

F:この数字がバーコードの下に出ている数字と同じであればOK、違っていたらNGとなります。バーコードは書籍の価格にかかわるものだし、間違っているとお客様だけでなく取次業者や書店にも迷惑をかけてしまうので、絶対にミスを出してはいけない部分ですね。万が一ミスがあれば……全数を刷りなおさないといけません! もちろん全額当社負担です‼!

イ:これは責任重大ですね……

後編にもご期待ください!

制作部の七つ道具のうち、四つ目までをご紹介しました。トップをAdobeのソフトが飾ったり、印刷会社らしくカラーチャートが出てきたり、色鉛筆やバーコードリーダーなどなじみのあるものが登場したり……。前半だけでバラエティあふれるラインナップになりましたね。

さて、後半の3つには何が挙がるのでしょうか。ここだけの話、なんだか印刷以外の分野にも話が及びそうな予感がしています……。後編にもぜひご期待ください!

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