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若者の間で流行しているタトゥーシールはライブ・フェス・テーマパーク・ハロウィン・クリスマスなどのイベント事や街中でも腕や足に付けている方をよく見かけます。イベントの制限が緩和されつつある中で、実際にお友達とのお出かけやライブやイベントの時に付けてみたいと思ったけれど、お気に入りのデザインが無かったり、あと一歩物足りない…という経験をした人も多いはずです。それならば自分達の好きなデザインでタトゥーシールを作ればいいじゃん!と思いタトゥーシールのデザインから作成、実際に作成したタトゥーシールを付けてみました!どんな感じで仕上がるのか、ドキドキワクワクです…  

実際につくってみよう!

まずは、かわいいイラストを描いてみよう!

好きなものを題材にしてしまえ!という事で、スタッフ I の好きな熊をイラストにしてみました。鮭をくわえた熊でもよかったのですが、北海道のお土産っぽくなってしまうので、スタッフ S の好きなスイーツも加えてテンションアップ!!ニコニコ顔のくまちゃんがカフェスイーツを食べようとしている可愛らしいイラストにしてみました。

書いたイラストをデータ化しよう!

手描きのイラストを Adobe Illustrator を使ってデータに変換していきます。
データ作成の際は、実際にシールなった際の「ふち」の部分や、印刷の下地に使用する「白版」など、出来上がりをイメージしてさまざまなパーツを作成していく必要があります。書き起こしたイラストのサイズでは大きすぎてタトゥーにならないので、ちょうど良い大きさにリサイズする作業もこの段階で行っていきます。また、今回は通常の4色(CMYK)にプラスして蛍光ピンクを使用し、鮮やかな仕上りを目指しました。

↑実際のシールと同じ大きさ

シール製作に応用される「シルクスクリーン印刷」

絵柄が印刷された紙を「シール」にするためには糊を塗布していく必要があります。この糊の塗布作業はシルクスクリーン印刷のしくみを応用して行います。シルクスクリーン印刷はメッシュ状の版の孔(あな)からインクを垂らして印刷していく印刷方式で、孔版印刷とも呼ばれています。

昔は版に絹布を使用していたことから名前に「シルク」とついていますが、現在の版は化学繊維でできています。枠型にピンと張られた化学繊維の布(スクリーン)に感光乳剤を塗布し、印刷したい絵柄を隠すように紫外線を当てます。感光乳剤は紫外線で固まる性質があるため、紫外線が当たった箇所は乳剤が固まり孔が塞がります。逆に、紫外線の当たらなかった絵柄の箇所の乳剤は、現像工程で洗い流され、孔が空いた状態になります。現在は乳剤を塗ったり洗浄したりという工程を、専用の感材にピンポイントに熱を加えて開孔することで、スクリーン版を作る「デジタルスクリーン製版」が主流となっています。

化学繊維製の版

なお、孔の目の大きさは版によって異なり、メッシュという単位で規定されています。今回使用した版は70メッシュなので、一つの孔の大きさは、1インチの中に70個並ぶ位の大きさなります。

メッシュ番目が大きいほどスクリーンの目は細かくなり繊細な表現が可能になります。一方で番目が大きすぎるとインクが目詰まりしてしまいます。印刷する内容によってメッシュサイズを選び、グラデーションなどを表現する場合は120メッシュ位のものを、布地に印刷するような際には今回使用した70メッシュ位が良いようです。

シルク印刷機で糊を塗布!!

では、実際に絵柄に糊を載せていきましょう!!!
印刷物(クマの絵柄)をシルク印刷機にセットし、トンボを目印に微調整しながら、シルク印刷の版(糊版)と合わせていきます。
糊版は印刷した絵柄よりも2mm大きなサイズで作成されています。糊版を大きくしておかないと糊版を乗せた際に、うまく絵柄と重ならないことがある為、一回り大きく作成しておく必要があるのですね。

版の上から糊を入れ、均一に伸ばしていくと、孔から出た糊が、クマの絵柄のある部分だけに塗布された状態になります。これを一枚一枚繰り返していき、適度に糊を乾燥させて、次の工程に移ります。
なお、使用する糊は人の肌に貼るという用途に合わせ、絆創膏などで使用されている身体に優しいものを使用しています。

糊の塗布はもちろん手作業!
これで絵柄の裏側に糊がつきました

セパレートフィルムを貼り付けよう!

この状態でほぼタトゥーシールになっていますが、これで完成ではありません。このままだと糊が露出したままになってしまうので、セパレーターと呼ばれる透明なフィルムを貼り、糊にフタをしていきます。セパレーターは片面だけ糊が剥離する加工がされています。表裏見た目が全く同じなので、どちらが剥離する面なのかは手触りで判断しているそうです。慣れてくると触るだけで分かるそうですが、スタッフ I には全く違いが分かりませんでした・・・。
ローラーを使用して空気を抜きながらセパレーターを貼り付け、最後に仕上りサイズに断裁して完成です!

ついにタトゥーシール完成!!!!実際に肌に貼り付けてみましょう!

ではでは、作成したタトゥーシールを実際に貼ってみましょう!
①フィルム(セパレーター)をはがして肌にくっつける
②水で濡らす
③水気をふき取る
④台紙をゆっくりとはがす
⑤出来上がり
詳しくは付けてみた動画をご覧下さい!!!

タトゥーシールの仕組み

まずは図をご覧ください。出来上がったシールは薄いものですが、実際は7層構造になっています。

今回使用した紙(メディア)は①紙の下に②澱粉質の溶剤が塗られ、さらに澱粉質が溶けださないように③アンカーが塗られています。この下に④クマの絵柄を印刷して、肌に貼っても透けないように⑤白で印刷してフタをします。更にシルク印刷で⑥糊を塗布し、最後に⑦セパレーターを貼って完成です。

肌に貼る際には⑦セパレーターを剥がし、⑥糊で肌に貼り付けます。その上から水を掛けると、②澱粉質が溶けて、①紙が剥がれて、③④⑤⑥だけが肌の上に残るという仕組みになっています。

おまけ1 白版無しでシールを印刷してみた

白版は絵柄をはっきり見せるために使用しますが、今回は失敗作として、白版を使用しないシールも作成してみました。

白版が無いと、肌の色が透けてしまい、貼ったときにくすんでしまいます。実際に貼り比べてみました。写真左が白版無し、写真右が白版有りです。違いが一目瞭然ですね。本物の熊に寄ってしまいました。尚、濃度が高いデザインには白版は必要ない場合もあります。

おまけ2 白版無しのシールを肌の色が違う場合、貼ったときに色味の差が出るのか試してみた

白版無しのシールを貼ったときに肌の色が違うと色味の差が出るのか見比べてみましょう。
「色が白いのは七難隠す」京美人系のスタッフ I と、夏真っ盛り健康優良児のスタッフ S で貼り比べてみました。

少しの差ですが、
スタッフ I の方が明るく、スタッフ S の方がくすんでしまっています。白い肌がうらやましいスタッフ S でした・・・。

おまけ3 セパレートフイルムを逆の面で貼ってみた

前述にありました、フィルム(セパレーター)ですが、裏表逆に貼るとどうなるのか実験してみました。現場の方は触り心地で判断していますが、逆に貼ってしまうとどうなるのでしょうか・・・

結果は、シールをセパレーターから剥がす際にシールについている糊がセパレーターについてしまい、きれいに剥がすことができませんでした。これでは糊がつかないのでシールが肌に貼れません。これを触り心地で判断している現場の方・・・凄すぎます

理想のシールが出来た!

手書きで書いたイラストがどれくらい再現されるシールになるのか、少しドキドキでしたが、現場の方の腕もあり、イメージ通りのシールを作成することが出来ました。自分たちでデザインしたものが具体的な製品になっていく工程を見学できたのは良い経験になりました。タトゥーシールに触れる機会があれば、ぜひこの記事を思い出していただけると嬉しいです。

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