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仲間と協力して頭を使い、謎を解いていく謎解きイベント。
人気アニメや映画とのコラボ、商業施設のPR、地域活性化のための企画など、その世界に入り込んだかのような非日常の体験が出来るイベントが、人気を集め注目されてきました。
全国各地で様々なイベントが行われている分、ゲストを楽しませるために、謎解きの仕掛けもたくさんあります。
今回は、そんな「仕掛け」の部分に注目していきたいと思います。

謎解きの「仕掛け」を大公開!!

ゲストが何かアクションを起こすことで謎を解くヒントが現れる、体験型の謎解き。
そこにはさまざまな仕掛けがあります。
ここからは、その「仕掛け」を作り上げている印刷技術について紹介していきます。

フラッシュ印刷

突然ですが、質問です!
あなたの心が癒されるのは、下のA・B・C・Dの4枚の写真のうち、どれですか?

…選びましたか?
では、この写真全体をフラッシュ撮影してみましょう。パシャッ!

フラッシュをたいて撮影してみると…あら不思議!隠された心理テストの答えが出てきました。
(ちなみに筆者はDを選択。休息が必要なようです…笑)
スマートフォンやデジタルカメラでフラッシュ撮影することで隠れていた絵柄を浮かび上がらせることができるのです。では、わくわく感があふれ、誰かに話題を共有したくなるこの仕掛け、一体どんな仕組みなのでしょうか?

この、フラッシュ撮影することで、隠れていた絵柄を浮かび上がらせることができる印刷手法を「フラッシュ印刷」といい、「再帰反射」の仕組みを応用した印刷技術です。

再帰反射とは?
どの方向から光が当たっても、光が入ってきた方向に再び帰る反射現象のことを指します。

そして、再帰反射を利用した印刷技術を「再帰反射印刷」といいます。

再帰反射印刷とは?
微小なガラスビーズと反射材が含まれたインクを利用することで、入射してきた光をビーズによって屈折、反射材によって鏡面反射をさせ、結果的に光の入射してきた方向に反射させる印刷技術のことを指します。
通常時に見えているデザインや色が、光を当てることで、そのまま反射して見えるのが特徴です。
道路の標識や防犯グッズなど、夜間や薄暗い屋外で、交通安全の注意喚起などを目的としたものでの実績が多く、身近な生活用品にも使用されています。

そして、この再帰反射印刷をさらに応用した印刷技術が「フラッシュ印刷」なのです。
フラッシュ撮影をする際の光が再帰反射する原理を用いて、通常では見えない隠された絵柄が一瞬で表示される特殊な印刷技術です。

特徴はフラッシュ印刷の仕上りにあります。
表面がカラーとブラックのストライプ状になっており、そこに特殊な技術の秘密があります。
フラッシュ印刷は、再帰反射機能を備えたシートに2種類の異なるデザインをストライプ印字するのですが、1つは非透光性インクの通常デザイン、もう1つは光を照射したときに再帰反射する透光性インクのデザインです。2つのデザインはストライプの配置が異なるため、互いに干渉しない仕組みとなっています。フラッシュ撮影をしたときに透光性インクのデザインだけが表示され、通常見えているデザインとは異なった絵柄が浮かび上がって見える、という仕組みとなっています。

アミューズメント施設などのフォトスポットでの活用や、今回のテーマでもある謎解きなどの企画やイベントでの活用が多く、SNSでの拡散効果もあり、使い方にさまざまな可能性が見込めます。

ソーラープリント

左の白黒の男女が、太陽の光を当てると右のようにフルカラーに発色します。
(ニコニコ笑顔になりましたね!)

続いてこちら。なんとも恐ろしい映像ですね…
紫外線を照射すると、時間の経過とともにだんだんと発色していくシミ・そばかす。
本当に紫外線によって肌の状態が変化する疑似体験ができます。

これらは「ソーラープリント」といって、太陽の光を受けるとフルカラーで発色するインクを使った手品のような印刷技術です。自然エネルギーである太陽光(紫外線)の有無で、発色・消色を繰り返します。じわじわと色が浮き出てゆっくりと消色するのが特徴です。
※UVライトを照射しても発色・消色を繰り返します。

余談ですが。
UVカットクリームなどの製品を購入した時に付いてくるような「UVチェックカード」。
これは、感紫外線インキが使用された印刷物に日光などの紫外線を当てると、無色だった部分が発色するというものです。紫外線に当てる時間が長いほど、濃く発色します。また、一度発色したものでも、紫外線を遮るとどんどん淡くなっていき、再利用もできます。このカードによって、目に見えない紫外線を可視化することができ、紫外線対策にも使用できます。

蓄光印刷

あれ?
ホタルみたいに光っているよ…!
暗闇で光るフェイスシールが売られているのを見たことはありませんか?

日光や蛍光灯の紫外線を吸収することで暗がりで黄緑色・青・赤などに発光する仕組みを蓄光と言いますが、これを活用したものが暗闇で光るフェイスシールの仕組みです。発光は時間の経過とともに減少していきますが、再び紫外線を吸収すると繰り返し発光します。
蓄光塗料は、時計の文字盤や計器盤等の夜間視認を可能にする夜光塗料として発明されたそうですが、近年では高性能な蓄光インキの開発により、日常生活にも利用されるようになりました。
光る粘土や光る折り紙とうたった商品を見たことはありませんか?これらも蓄光効果を活かしたおもちゃの一つなのです。お菓子のパッケージにも蓄光インキが使用された事例があり、食べるだけでなく、食べ終わった後も楽しめる工夫がされています。
また、電源を必要とせずに発光する「蓄光」は、災害時に非常に有効な手段であると考えられ、安全防災の分野で多く利用されています。

余談ですが、非常口マークが緑色なのは、火災の時、赤い炎の中で最も視認しやすい色が緑色だからだそうです。赤と緑は補色の関係にあるため、互いが互いの色を際立たせる関係にあります。
蓄光インキに黄緑色があることと縁が深いようにも思えますね!

【身近なもの】

非常口(誘導目的のサイン)

折り紙

水透かし印刷

水面の絵が描いてあるコースター。
上に冷たい飲み物を置いてしばらくすると、どうなると思いますか?

…お?赤い金魚が浮かび上がってきました!
普通なら飲み物を置くだけのコースターも、このような仕掛けがあると、遊び心があって面白いですね!
時間が経ち、常温に戻っていくグラスから水滴が垂れ、コースターが濡れることで、このように隠された絵柄が浮かび上がってくるのです。

この、水に濡らすと徐々に文字や絵が浮き出て楽しめるような印刷技術を、「水透かし印刷」といいます。
印刷部分を水で湿すと、予め印刷しておいた下地の印刷が浮かび上がって見えるというものです。
もちろん水分が乾けば元通り見えなくなるので、何度も繰り返し楽しめます。
最近では謎解きとホテルがコラボレーションして水透かし印刷が用いられ、紙を水に濡らすことでヒントが浮かび上がり、謎に近づくことができるというものもあります。

余談ですが。
水透かし印刷をご自宅でも簡単に再現できる方法があります!

・材料:洗剤、水、筆、ドライヤー

1. 洗剤と水を混ぜ、筆で好きなものを書く。
2. 書いたら、ドライヤーで乾かす。
乾かすと、文字が消えます!
3. それを水に濡らす。
濡らすと、文字が浮かび上がります!

これは洗剤の界面活性剤が作用することで水をはじき、浮かび上がったような錯覚が出来上がるのです。ご自宅で実験してみてはいかがでしょうか。

スクラッチ印刷

そう、コイン(10円硬貨など)や爪先で擦ると絵柄が現れる、スクラッチくじなどでお馴染みの手法のひとつです。宝くじのスクラッチ部分を徐々に削っていき、いくら当たるか…!と魅せる番組があるように、削るときのワクワク感が楽しめます。

特殊なインキを絵柄上の部分的に施し、印刷された絵柄や文字などを覆い隠すのが「スクラッチ印刷」です。
下地が「透けて見えない」「情報を隠すことができる」のが特長です。

また、スクラッチ印刷には他にも、けずりカスが出ないスクラッチや、鉛筆でこするタイプのものもあります。

・けずりカスの出ないスクラッチ

・鉛筆でこするスクラッチ

以前のけずる部分が銀色のスクラッチだとけずりカスがぼろぼろ出ていました。
(筆者はスクラッチで当たりが出た経験がありませんがみなさんはいかがでしょうか…)
現在ではけずりカスの出ないスクラッチを見る機会が多くなってきましたが、この仕組みは一体どのような仕組みなのでしょうか。
それは…
銅に反応する特殊なインキが10円玉(銅)と擦れることで浮かび上がって見えるのです!
しかし、銀スクラッチと比べて元の絵がばれやすいため、ゲーム性の高いくじなどは避けた方が良いでしょう。
けずりカスの出ないスクラッチや鉛筆でこするスクラッチは、銀スクラッチのように削った後にカスが出ないため、とても衛生的で食品や衣料品、化粧品等を扱う売り場におすすめです。

示温印刷

お風呂の壁にペタッと貼り付けることができる、このくじらのポスター。
お湯をかけると、黒からピンクへ絵柄が変化していきます。

度(熱)を感じると印刷された部分の色が変化するような技法を、「示温印刷」といいます。
示温印刷は示温インキという、温度の変化によって発色・消色を繰り返すインキを使って印刷しています。
また、設定温度を上回ると無色になり、下回ると発色します。(温度設定について、現在の調達先のラインナップでは、0℃~55℃より選ぶことができます。)
例えば、設定温度が低めのインキにすれば、冷蔵庫で冷やすことで発色させることができたり、設定温度が高めのインキにすれば、お湯やドライヤー、または体温などで消色させることができたりします。

・冷やすことで絵柄が変化する「飲み頃シール」
ビールなどの飲み物や、夏場限定の冷やすタイプのお菓子などのパッケージにも使用されており、「絵柄が消えたり現れたりと、変化を楽しむことができる」、「冷蔵庫に入れて冷やすことで新しい食べ方を提案できる」ということを、消費者や販売者に提示することができます。

・飲み物の温度によって絵柄が変化する「アメージングタンブラー」
中に注ぐ飲み物の温度により、違う絵柄が現れたり図柄が変化したりするタンブラーは、この示温印刷の効果を利用したものです。下のように、夜景の絵柄がお湯を入れると夕焼け空に変化し、元の温度に冷えるとまた夜景が現れるといった変化が楽しめます。

まとめ

印刷技術で、たくさんの仕掛けを作れることが分かりましたね!
身近な面白いものが、実は印刷によって表現されていたと知ることも出来ました。
それぞれの特徴を理解した上で、求める製品にはどの仕掛けが適切かを選ぶ必要もありそうです。

今回、さまざまな仕掛けのタネを紹介してきましたが、やはり、これまでの謎解きイベントで実績の多い、「フラッシュ印刷」が気になるところです!大きいポスターで、派手な仕掛けが期待できるところも魅力的ですね。
フラッシュ印刷の製品を作る上で、どのような打ち合わせが必要なのか、何に気を付ける必要があるのか、私たちが実際に体験してお知らせしようと思います。

…ということで、次回、この「フラッシュ印刷」を活かした仕掛けを作成し、謎解きイベントを実際に開催してみたいと思います!お楽しみに!

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