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ChatGPTに印刷会社の新人研修の問題を解かせてみる 前編

4月になりました。弊社でも例年のごとく新人を迎え、社内にはフレッシュな雰囲気がただよっています。

ただいま新人のみなさんは弊社の各部署にて現場研修の真っ最中で、印刷に関するあらゆる知識を学んでいます。筆者が新人たちとかかわるのは現場研修が終わったあと。現場研修で学んだ知識の復習をしつつ、社内システムの操作方法をレクチャーしていく予定です。

とりあえず復習用の問題を作ったので、あわせて模範解答も用意したいのですが……せっかくなのでChatGPTにお願いしてみました!

ChatGPTとは

確率に基づいて文章を続けるシステム

今年になって話題沸騰中のChatGPT。ユーザーからの質問やお願いに対して返答してくれる対話型のサービスです。国会の質疑でも取り上げられるなどして大きく注目を集めていますね。

ChatGPTが文章を生成するしくみをざっくり説明すると、確率にもとづいて単語を並べて文章を続けていくといったところでしょうか。たとえば「彼の好きな飲み物は」という書きかけの文章があれば、後に続く単語を「こういうケースだとこの単語が続く可能性が高いな」といった推論を行い、単語が出現する確率にもとづいて選んでくれます。

もちろん自然な文章となるような適切な単語を選ぶためには、単語の出現確率が正確である必要があります。つまり、おおもとのサンプルが偏っていてはいけません。そのため、ChatGPTはWeb上に存在する膨大な量のテキストをデータとして読み込んでいます。膨大な引き出しのなかから確率的にもっとも高いものをならべて文章にする、これがChatGPTのしくみです。

なお、2023年4月現在、ChatGPTがデータとして読み込んでいるのは2021年9月以前に存在したテキストのみ。以降に世に出たものについては学習していません。そのため「2023年現在の日本の総理大臣は?」などの質問には今のところ答えられないようです。

これも立派な業務改善(?)

もちろん印刷にかかわる文章についてもChatGPTはデータとして読み込んでいるはず。するするに限らず印刷のあれこれについて掲載しているWebサイトは数多く存在しているのですから、印刷関連の問いを入力すればきっと何らかの回答をアウトプットしてもらえることでしょう。

ということで、新人研修用に用意した印刷に関する基礎知識の問題をChatGPTに打ち込み、生成された解答を吟味していきます。うまくいけば模範解答として解答解説にそのまま採用! これも立派な業務改善の試みなのです(?)。

模範解答をくれ!

まずは小手調べ

はじめに解いてもらうのはこちらの問題。

「印刷の精細さはスクリーン線数によって決まります。スクリーン線数を表す単位は次の3つのうちどれか答えてください。『dpi』『lpi』『Ing』」

純粋に知識を問う内容、かつ選択式の出題です。おそらく生成AIが一番正確に解答できそうなケースではないでしょうか。

さて、ChatGPTの解答を見ていきましょう。









判定は……採用!

見事正解してくれました。それどころか正解以外の選択肢についても説明してくれていますね。

補足をしておくと、lpi(lines per inch)とは印刷物の網点の列を線(line)としてとらえ、「1インチの中に網点の列が何本入るか」を表しています。数字が大きくなればなるほど線が細くなる:繊細な絵柄が印刷できることになります。一方dpi(dots per inch)は印刷された絵柄の精細さをあらわす単位で、「1インチの中にドットがいくつ入るか」を表しています。ほかにもよく似た単位として、デジタルデータにおいて画像の画素数を表すppi(pixels per inch)があります。デジタルデータの絵柄はピクセルと呼ばれる正方形で構成されており、ppiは「1インチの中にピクセルがいくつ入るか」を意味します。

なお、「Ing」という単位が存在しないのはその通り。実はこの選択肢、ひっかけです。

そつのない答えを出しつつひっかけも回避。幸先のいいスタートではないでしょうか。

まだ学習が足りていない部分も

2問目に行きましょう!

「中綴じ冊子のページ数は特殊な場合を除いて必ず『ある数』の倍数になります。『ある数』にあてはまるものを答えてください。」

これも知識を問う内容ですが、解答は選択式ではなくChatGPTが導く形になります。

ほんのわずかに難易度を上げたつもりですが、ChatGPTはどう出るのか……?









判定は……ちょっと迷ったのですが不採用!

4の倍数、とだけ答えてくれれば採用でもよかったのですが、後に続く記載が怪しいのがマイナスポイント。好意的に解釈すれば言わんとしている(?)ことが読み取れなくもないのですが……。中綴じ冊子のしくみまではうまく説明ができないようです。

もちろん正解は「4の倍数」。中綴じとは、本の背の部分を針金でとめて固定する製本方法の名前です。製本・断裁が終わった中綴じの冊子は、2つ折りになった紙が重なって針金で留められた構造になっているので、特殊な場合を除いてページ数が必ず4の倍数になります。

なお「数字で答える」という解答の形式上、ChatGPTが偶然「4」という正解を引き当ててしまった可能性もぬぐえないので、念のため別角度から出題してみました。

「次の文章が正しいか誤っているかを答えてください。『中綴じ冊子のページ数が4の倍数になることはない。』」









これはまずい。さきほどと同じく初めの答えは合っていますが、最後に致命的なミスを犯しています。

「……必ずしも4の倍数でなくてもよい場合もありますが、一般的には4の倍数が好まれます。」……好みの問題じゃないぞ! まるで大事なことがまったく頭に入っていないままノリと勢いでその場をやりすごそうとする問題児のような解答ではありませんか。

ただし、前半の「必ずしも4の倍数でなくてもよい」というのはあながち間違いではありません。中綴じ冊子のページの一部が「片袖折り」になっている場合は、4の倍数とならないケースもあります。

とはいえ片袖折りは折の作業に手間がかかるので、印刷会社によってはあまり推奨していないところもあるかもしれませんね。

……もしかして、「一般的には4の倍数が好まれます。」とはこのあたりの事情もふまえた解答なのでは……?
片袖折りについてちょっと2問ほど尋ねてみましょう。














そういうわけでもないようです。ところどころそれらしい記述がありますが、片袖折りがイレギュラーな仕様(≒多少手間がかかる)だという認識はなさそうですね。

なお、どちらの質問でもあたまに「印刷における『片袖折り』」「印刷物の『片袖折り』」と補足を入れていますが、これは「片袖折り」のみで訊くと和服のたたみ方だと勘違いされたためです。そんなたたみ方は存在しないのですが……。

大丈夫、なのか……!?

ここまでの結果を見た限り、ChatGPTはそれなりに印刷について学んでくれているのがわかります。ただ、細かいしくみや構造の話になるとまだ詰めが甘い印象です。以前画像生成AIに印刷機を描かせた際にもやはり機械の細部の再現に難があったので、このあたりは通ずるところがありますね。

また、同じ趣旨でも問題の訊き方を変えただけでとんでもない解答が出てきたのも気になるところ。後編ではより難易度の高い問題を試していく予定ですが、ちょっと不安の残る展開です……。しっかりしてくれ、ChatGPT!

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