日経印刷 CSRレポート 2021
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「自分ごと」として取り組むSDGsのために*「サスティナブル経営」とは、企業が地球環境に対する影響に配慮しながら事業活動を行い、長期的な発展を目指す経営のことを表します。近年注目が集まるESG、ESG投資。上場企業や大企業は、株主、 投資家、消費者等から、非財務の情報開示が求められ、これらステークホルダーは ESG への対応を期待することから、対応を迫られています。一方、非上場企業や中小企業は、こうしたステークホルダー からの情報開示を強く求められないため、ESG よりも SDGs の取り組みから始めることが多いようです。SDGsウェディングケーキモデルは、企業の事業活動が各階層に与える悪影響の整理に利用可能です。まずは「生物圏」に与える悪影響を洗い出し、「社会圏」に与える影響を考察した上で、「適切な経済活動」とは何かを考えます。このようにSDGsウェディングケーキモデルの段階ごとで課題を見つけられれば、サスティナビリティな経営戦略に必要な要素の発見に活用できます。サステイナブル経営の 実現を目指して組織全体が変革に向かうためには、組織の一人ひとりが当事者として行動を起こし、それを継続することが欠かせません。SDGs も ESG も、サステナブル経営に欠かせない要素になります。SDGsの背景:世界全体が共有する危機意識の高まり地球環境は現在、深刻な課題を数多く抱えています。エネルギー問題ではCO2排出量の増加による温暖化、異常気象や自然災害の増加、森林の砂漠化と水不足など。人が生活する社会では、国際紛争もあり貧困や差別などの問題も解決していません。それにもかかわらず、世界人口は現在の77億人から2050年には97億人に増えると予測されています。貧困層はさらに増え、環境破壊が進み、食料が不足し、資源を奪い合って争いが絶えなくなるという事態が起こるかもしれません。「このままではいけない」という意識が世界全体で認識され、SDGs目標を掲げることになりました。SDGsは、世界の国々が共通の問題として改善、解決に向けて動き出し達成しようと掲げた17の目標(ゴール)です。正式には、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)です。「誰一人取り残さない(leave no one behind)」持続可能な社会の実現を目指す世界共通の目標は、2015年、国連サミットにおいて全て※2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられました。外務省 JAPAN SDGs Action Platformより詳細を確認いただけます。https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/statistics/goal1.html の加盟193ヵ国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ(実施する計画)」の中で掲げられました。2030年を達成年限とし、17の目標と169のターゲットから構成されています※。国連は、SDGs の達成は、企業のみならず、市民の社会的な使命でもあると定義しています。全世界の社会課題・ニーズであることから、企業にとって、将来の大きなビジネスチャンスとして捉える側面があります。また、SDGs の達成に貢献するビジョンや成長戦略を非財務情報として開示することで、企業のブランドイメージ向上を図り、新卒採用に苦戦する中小企業にとっては、SDGs への取り組みを積極的に発信することで採用力を強化するなど、多くの企業がSDGsを掲げ事業を展開しています。6もうひとつ、「トレードオフにならない」こと。トレードオフとは、何かを得ると別の何かを失う、相容れない関係のことです。SDGsではトレードオフにならない仕組みを作ることが重要です。日本の歴史を振り返っても、戦後の急速な科学や技術の発展、経済の成長により公害が発生し人々は苦しみました。これは経済に偏り過ぎたため起こった環境破壊であり、昭和の世代が体験した実例です。SDGsでは経済、社会、環境の3つを両立させながら発展することで持続可能な社会を目指していきます。ESG投資の評価基準などの資本主義的な側面とは別に、SDGsの理念が描く世界は、次世代を担う子どもたちへの浸透も早く、「大人より小学生の方が詳しい」という現象からしても、シンプルに地球を守るアクションへ導く浸透力を持っています。素敵だと思いませんか? SDGsの理念SDGsの理念に「誰一人取り残さない」世界を作ることが掲げられています。先進国や新興国が途上国を置き去りにしないというだけでなく、女性や子供、障害や病気を持つ人、性的・宗教的マイノリティや先住民、移民、難民など、どこでどのような暮らしをしているかにかかわらず、弱い立場、苦しい立場にあるすべての人に目を配り、「誰一人取り残さない」世界を作って行こうという意味が込められています。

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